フェルメールは17世紀に活躍したオランダの画家です。精密な空間構成と巧みな光と質感の表現が特徴で、その絵画は今なお人々を魅了しています。現存する作品は研究者によって異同はあるものの、33〜36点と非常に少ないのは、彼が43歳の若さで死去したためです。絵画の特徴の一つとして、画面中心に据えられる人物が濃厚で精密に描写されるのに対して、周辺の様子はあっさりとした描写になっていることが挙げられます。この対比によって、見る者の視点を主題である人物に集中させ画面に深みと緊張感を与えています。

また光の表現には細心の注意が払われています。光源や、その光源の屈折や反射を細かく描写することにより、画面に独特の空気感や静けさ、永遠性を与えています。正確な透視図法(遠近法)による描写も特徴で、描画の参考とするためにカメラオブスキュラを用いたとされています。この装置はピンホールカメラと同じようなもので、小さな穴のあいた箱からの光を映し出すことで、正確に下絵を作成することができます。その際の消失点を決めるために画面に針を刺したと思われる箇所が確認されています。この技法により画面に秩序を生みだし、ありふれた日常を描いていながら、時間が静止したかのような静寂を感じさせてくれます。特に有名な絵画が「真珠の耳飾りの少女」です。この作品は「ターバンを巻いた少女」とも呼ばれ、オランダのマウリッツハイス美術館が所蔵しており、口元にかすかな微笑みをたたえていることから「オランダのモナリザ」と称えられています。

黒色で統一される背景に鮮明に浮かび上がる少女の一瞬の表情が見る者に強烈な印象を与えます。登場人物以外の絵画的構成要素を極力排し、それに対して鮮明な光彩描写やターバンや衣装に使われた黄色と青色のコントラストによって、少女のふりむきざまの一瞬の表情を捉えた構図がいきいきと描かれています。印象的なターバンのブルーは、宝石ラピスラズリを砕いた天然ウルトラマリンブルーで描かれています。当時ラピスラズリは「天空の破片」といわれるほど高価なものであり、この青が非常に気に入っていたフェルメールは借金をしてこの青を使っていたと言われています。今ではフェルメールの絵に見られる鮮やかな青を「フェルメールブルー」と呼び、彼の絵画の重要な特徴として認識されています。描かれた少女については、フェルメールの娘マーリアとある意見もありますが真相は不明です。